パラレルワールド・ラブストーリーはなぜハマるのか?
はじめに
最近、ふと久しぶりに小説を読みたいと思い、東野圭吾さんの名著「パラレルワールド・ラブストーリー」を読んでみました。
久しぶりの小説ということで、いつ読み終わるかと思っていたのですが、買った次の日には読み終わっていました。笑
今回は、自分がなぜそこまでこの物語に引き込まれたのかを考えてみましたのでご覧ください。
物語のあらすじ(ネタバレなし)
向かい合う車両の中で起こった運命の出会い
主人公の敦賀宗史は、バイテック社という科学系の会社が研究者の養成のために作った、MACという大学院に通う学生である。
宗史はMACに電車で向かう途中、必ず別の列車とすれ違う。別の列車にはいつも、綺麗な女性が乗っており、宗史は彼女に惹かれていく。
宗史はいつも彼女を自分の乗る電車越しに見ていた。そのうち、宗史は彼女も自分のことを見ていることに気付く。
大学院を卒業する日、MACに向かう最後の日に宗史は声を掛けることを決意し、いつも自分が乗る電車ではなく、彼女の乗る電車に乗った。
しかし、彼女の姿はなくふと向かい側のいつも自分が乗っている電車を見ると彼女の姿があった。
憧れの彼女は親友の友達だった
科学者として働き始めた宗史。彼には中学校からの幼なじみで、同僚である三輪智彦がいた。
智彦が彼女を紹介したいというので、宗史は大学時代の女友達である、夏江を数合わせで連れて、あるレストランに向かった。
浮かれる智彦が紹介した女性は、大学時代恋をした電車の女性であった。彼女の名前は津野麻由子。彼らが通っていた大学院に通う学生だった。宗史の中では、智彦を祝う気持ちと妬む気持ちが入り混じる。
麻由子は宗史の彼女!?
ある朝、宗史が目を覚ますとキッチンには津野麻由子が料理をしていた。何も疑わない宗史。そう、麻由子は自分の恋人そう宗は認識していた。
ん?話が食い違ってるぞ?と読者を急に困惑させる展開になっています。
脳内、現実から消えた親友
麻由子との順風満帆な生活をする宗史。しかし、何かが足りないことを感じる。そう、親友三輪智彦の存在だ。
智彦が今何をしているのか、宗史は知人や宗史の親に話を聞く。智彦はロサンゼルスに転勤したようだが、誰もそれ以上の情報は教えてくれない。
そもそも宗史は、智彦がロサンゼルスに行ったことすら忘れている自分に違和感を覚えた。
重なり始めるパラレルワールド
記憶が少しずつ戻り、混乱する宗史。
彼の前に偶然現れたのは夏江だった。彼女と軽く話をしていると、智彦と麻由子の話になった。そこで、宗史は津野麻由子は自分ではなく、智彦の恋人であったことに気付く。
確かに麻由子は自分の彼女だと思っていた。彼女自身もそうだった。だが、事実は違った。麻由子は智彦の彼女なのだ。
ではなぜ、自分の彼女になっているのか。混乱する宗史。宗史は真実を知るべく、智彦に関する不可解な出来事を調べていくことにした.....
ハマるポイント
人間の永遠の課題「三角関係」
ミステリー小説なのですが、テーマとなっているのは男女の恋愛関係です。今回は男2人が1人の女性を求めて争います。
男として魅力は無いが、麻由子を手に入れた智彦。男として魅力があり、麻由子と運命的な出会いをしたにも関わらず、麻由子と付き合えない宗史。
次第に形勢は逆転し、宗史と麻由子は惹かれていく。しかし、智彦がいるために恋が叶わない展開が読み手の心をくすぐります。
巧みな場面切り替え
この作品は麻由子が智彦の彼女である場面と、宗史の彼女である場面を交互に描いている。次第にその矛盾した2つの場面が近づき、真相に迫っていきます。
両方の場面が少しずつ、いくつもの伏線を貼りながら展開されます。そのため、、自分は読んでいて次どうなるのか、真相はいつ分かるのか、早く知りたい!といった気持ちになりました。
1992年に書かれたとは思えない、科学ミステリー
この作品で扱われる科学というのは、脳科学が中心です。宗史と智彦は脳内にどのような刺激を与えると、どのような効果があるのかを調べていきます。
2人の立てる仮説や検証が、まるで本物の科学者のようで、1992年に書かれた小説にしては、精巧な内容だと思いました。昔の小説っぽさが全くありません。
終わりに
とにかく、何度も読み手の推理を裏切ってくる作品で、最後まで目が離せません。
映画化されており、それぞれのキャストもキャラにぴったりなので見てみたいなと思います。
また、初めて東野圭吾作品を読んだので、何かお勧めがあれば教えてほしいなと思います。