本好きのあらすじ解説&感想ブログ

主にビジネス書や小説、教育関係の専門書を読みます。その中でも面白い、良いと思ったらものをゆる〜く紹介します。

日本の部活動を変えるなら2択。スポーツを盛りあげるなら報酬の確保から

1.はじめに

自分はバスケットボール部の顧問として、後輩の女の子3人と共に子ども達に指導をしている。

楽しくやりがいのある活動であるが、部員が50人を超え、コートが足りない状況であるため、満足に指導が行えない。また、メニューを作る時間を割き、子ども達と目一杯走りながら指導にあたる割には報酬が少ない。部活動に参加しない先生方は、その間に自分の仕事を終わらせ、自分達が指導を終えくたくたで戻るときには颯爽と退勤していく。「本業の業務を少し軽減してくれれば…」と思うのだが、年数を重ねるごとに増えていく仕事。そんな中で「もっと教師と子供がよりよく活動できる方法はないのか。」と思った。色々と海外の様子や日本の現状を調べたところ、

①部活動をきっぱりやめる

②コーチを雇い、部活動に従事する教員及びコーチに適正な報酬を与える

このどちらかを日本は選ぶべきだと考えた。

 


2.国際的に見て日本の部活動は異常

まずは世界各国の部活動のあり方と比べ、日本がどれだけ異常かを考えていく。

・3つに分けられる各国の部活動のあり方

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この表は部活動のあり方を「学校中心型」「学校地域両方型」「地域中心型」の3種類に分け、世界の国を分類したものである。3つのタイプの特徴は以下の通りだ。

「学校中心型」→学校及び教員が部活を担う。

「学校地域両方型」→教員に加えて民間のコーチ

も部活動に参加して行う。

「地域中心型」→教員は参加せず、全て民間の団体がスポーツや文化活動の指導を行う。

この表を見て分かる通り「学校中心型」の国は至って少ない。そもそも「学校中心型」の国の中でも、日本以外の国は民間の指導者やチームが無いため、「学校中心型」にならざるを得ない国ばかりだ。日本のように民間の指導者やチームが充実しているにも関わらず、部活を学校任せにしている国は世界に存在しないのだ。よって、これからは民間のコーチやチームの力をもっと借りるべきだと考えられる。

 

[参考]

運動部活動は日本独特の文化である――諸外国との比較から / 中澤篤史 / 身体教育学 | SYNODOS -シノドス-


3.ブラック部活動にならないアメリカの部活動

次は「学校地域両方型」を採用して、トップアスリートを多く輩出しつつも、部活動が過熱化することの無いアメリカの部活動のモデルについて考える。アメリカの部活動のモデルには、日本が取り入れるべきポイントがいくつもあるので紹介していく。


・各年代ごとに練習や試合を実践

高校では、一つの高校に代表チーム(Varsity)、準代表チーム(Junior Varsity)、一年生チーム(Freshman)という3つのチームが設定されていることが多く、それぞれが、それぞれのトーナメント戦に参加する。これは指導者としてかなり助かるシステムだ。

例えばバスケットボール部を指導するとする。日本だと1年生から3年生まで全員を引率するだろう。そして、3年生を中心としたメンバーが試合に出場し、1年生は声出しをして終わりであろう。これまで部活をしてきた人には当たり前なのだが、本質的には1年生の技能を上達する時間を奪っているのだ。

アメリカだったらどうだろう。どの学年も大会があるため、それに向けて平等に練習を重ね、試合に出て経験を積むことができる。日本の選手よりも技能があり、経験豊富な選手が育つのが分かるだろう。

・教員と外部コーチのタッグ

アメリカは「学校地域両方型」のため、基本的に教員とコーチが複数名で部活動を指導している。

そのため、日本の部活のように状況によっては1人で部活動を運営することがない。

指導する際に複数人のコーチがいると、指導の幅が広がり様々な角度からアドバイスや指導ができる。複数人指導者がいることで、部活動指導を休めないといったプレッシャーからも軽減されるだろう。

・個人スキルの向上と居場所の分散のためには民間委託

アメフトやバスケ、オーケストラなどの個人スキルについては、民間のコーチやスクールがあり、子ども達を指導している。民間委託のメリット、それは個人スキルの向上居場所の分散ができるためだ。

個人スキルは間違いなく上達するだろう。なぜなら民間のスクールやコーチは子ども達を上達させることが役割であり、子ども達にスキルを身につけさせることで報酬が発生するためだ。そのために日々努力と研究を続けている。きちんと通い、コーチングを受けて努力を重ねればスキルは身につくだろう。

居場所の分散とはどういうことかというと、子どもが安心できる場所がいくつかあることである。例えば、従来の日本の部活動には「熱血顧問」が存在し、土日返上で1日中部活を行うことがある。

そうすると常に学校というコミュニティに身を置かなければならなくなる。これが居場所の集中だ。これは良い面もあるだろう。しかし、居場所の集中は子どもの逃げ場をなくしてしまう。例えば部活内のトラブルで他の部員や先生から爪弾きにあった生徒がいたとしよう。その生徒は周りと関係が修復できなければ、卒業するまで辛い思いをする。また、毎日のように学校にいるため、リラックスできる場所が家庭以外になくなってしまうのだ

アメリカのように民間のスクールに行ったり、コーチに指導を受けたりすると子どもの居場所が増える。これが居場所の分散だ。その後、もしうまくいかなくてもスクールやコーチとの契約をやめて、別のコーチやスクールと契約できる。Aのスクールでうまくいかなかったため、Bのスクールに変えると言ったことが学校とは違いできるのだ。また、学校で悩みごとがあったらスクールやコーチを通してストレス発散ができたり、相談ができたりするのだ。

個人スキルが伸ばせて居場所の分散になるため民間のスクールやコーチは必ず使った方が良いだろう。

 

【参考】

アメリカの部活動は、なぜ「ブラック化」しないのか|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

4.日本の部活動に対する報酬は異常

最後に報酬面の話をしていく。日本の部活動に対する報酬には問題がいくつかあるため紹介していく。

・公立の学校教員は時間外労働に対しての報酬は貰えない。

地方公務員にも労働基準法は適用される。しかし、教員については「給特法」と呼ばれる特別措置が適応され、給特法第5条によって、労働基準法第37条(時間外手当を必ず払いましょうというもの)が適用除外される。

さらに、給特法第3条第2項には「教育職員については、時間外勤務手当及び休日勤務手当は、支給しない。」と規定されている。

よって、この規定を当てはめると地方公務員たる教員は、部活顧問を行ったとしても時間外手当や休日手当は支払われないということになる。

 

 

・休日の部活動には手当てがある。

給特法により、教師には時間外手当や休日手当てが無いということだが、実は部活動に対する手当は存在する。

地方公務員たる教員は、休日に4時間以上の部活顧問を行った場合、休日手当の代わりに文部科学省が定めるが定める「部活動手当」の3,000円が支払われるのだ。

休日4時間以上の部活顧問に対して一律3,000円のため、労働基準法が定める時間外手当や休日手当と比較するとかなり低い水準である。

また、放課後や、休日であっても4時間に満たないような場合には、部活動手当は支払われない。

ということは、手当てが支給されるのは休日のみなのだ。

文部科学省は、平成31年1月からの部活動手当を「土日4時間程度」の場合を現在の3,000円から3,600円に増額し、「2~4時間」の場合でも1,800円の部活動手当を支払うこととしている。だが、平日は手当ては対象外であり、金額自体も部活顧問に対する手当としては十分なものとは言えない。

自分が年間何時間活動をして、手当てがどれくらい支払われたのかを計算してみた。


年間活動時間

平日  週3日×1時間×50週=150時間

休日  月2回×4時間×12ヶ月=96時間

平日+休日=246時間(メニューを考える、予定表を作成、印刷すると言った事務時間は除く。)


年間の部活動手当て

平日  2時間以上の活動では無いため手当て無し

休日  年間24回×3600円=86400円

平日+休日=86400円


よくある時給換算をしてみると時給351円である。これは地方のアルバイト最低賃金の半分程度だ。

自分はバスケットボールが好きなため苦ではないが、手当てがこの程度だと部活動をせずにゆっくり休みたいと思う教員がたくさんいてもおかしくないだろう。

 

【参考】

部活の顧問に「時間外手当」や「休日手当」はつく? つかない? - SmartHR Mag.

 

一方でアメリカの教員やコーチはどうだろうか。

コーチ報酬額の資料を集めたものを分析すると、一般的な公立校運動部コーチの報酬は、教員年収の10%程度が相場のようだ。内部教員、外部指導者ともにコーチとしての報酬が支給される。

アメリカの部活動指導に対する年間の手当てリストである。アシスタントコーチなどもあり、面白い。)

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日本円で言うと年間40万から50万の手当てが支給されるのだ。自分が今貰っている手当ての4倍から5倍だ。国のあり方の違いはあるだろうが、あまりにも日本の部活動に対する報酬は少ないのだ。

 

【参考】

指導者報酬はハウマッチ? アメリカ学校運動部(谷口輝世子) - 個人 - Yahoo!ニュース


5.結論「部活動をどうするかは2択だろう。」

ここまで述べてきたが、国家の在り方の違いやアメリカのモデル、報酬の少なさから考えてみると、現状のまま部活動を実施していくのは間違っているといえる。そのため、子どもや教員がよりよく過ごすためには

①部活動をやめて地域中心型に移行する。

アメリカのような「学校地域両方型」に移行する。

この2つから決断すべきだと考える。

①については名古屋市の小学校で実施が始まっているのを聞いたことがある。日本の部活動は将来的に「地域中心型」になっていくのではないだろうか。しかし、バスケが好きな自分としては②のアメリカのような「地域両方型」になっていくことを望む。アメリカのモデルであれば、希望する教員だけが相応しい報酬を受け取り、モチベーションの高い生徒達とより高度な部活動ができるからだ。

文部科学省が部活動をどのように変えていくのか楽しみである。