本好きのあらすじ解説&感想ブログ

主にビジネス書や小説、教育関係の専門書を読みます。その中でも面白い、良いと思ったらものをゆる〜く紹介します。

二瓶弘行先生が教えてくれる、物語文指導9つの疑問と解決方法

物語文を子どもに教えるとき、何から手をつけたらいいのか全く分からない!!

 

来年度から教科書の中身が変わり、新しい物語文が出てきたらどうしよう…

 

そんな心配をされている方から、国語の指導が好きな人まで、読んでためになる本を紹介します。

 

今回紹介するのは、二瓶弘行さんの物語文授業づくり入門編です。

 

この本は、二瓶先生の物語文授業の基礎的な部分がまとめられた書籍です。

 

読んでみると、物語文の授業って奥深いなと、改めて感じさせてくれる内容ばかりです。

 

さて、今回は本書の中から、特に大切だと思った物語に関する9つの疑問を解決方法とセットで話していきます。

 

目次

 

疑問①説明文と物語文は何が違う?

説明文と物語文は、文の構造が以下のように違います。

 

【説明文】


言葉→文→段落→意味段落(形式段落)→文章

 

【物語文】

 

言葉→文→段落→場面→文章

 

子どもに何が違うのかを聞かれたら、赤色の部分を⬜︎にして、クイズを出すと分かってもらえますね。

 

疑問②なぜ、物語は作者と呼び、説明文は筆者と呼ぶのか?

作者と筆者に呼び分けるのには、確かな理由があります。

 

【説明文】

事実を文章にまとめた人のことを筆者と呼びます。説明文は、事実をもとに書いた文章のため、書いた人のことを筆者と呼びます。

 

【物語文】

文章を創作した(事実ではないものを作ること)人のことを作者と呼びます。物語文は、基本的に創作された文章のため、書いた人は作者となります。

 

※ちなみに、本を出版した人のことを著者と言います。ここも区別しておきましょう。

 

 

疑問③物語文を「読み取る」とはどういうこと?

 

【物語文を読み取る】

 

①作者の込めた人生観や価値観を探り当てる。

 

②「自分はこの物語から何を感じたか。」感想をもつことができること

 

また、①のことを「物語の主題」や「作品の心」などと呼びます。説明文と比べてみましょう。

 

【説明文を読み取る】

 

①筆者の要旨をつかむこと。

 

②伝えたいことが、どのように表現されているかを検討すること。

 

③筆者の考えに対する、読者としての自分の意見や感想をもつこと

 

物語文と比べると、要旨をつかむ、自分の意見をもつと言った部分に違いがあります。

 

疑問④最初に物語を読んだ感想を書かせたほうが良い?   

 

書かせたほうが良いです。

 

ただし、その物語の授業を全て終えた後に、もう一度感想を書かせる必要があります

 

なぜなら、最初に書いた感想と最後に書いた感想を比べて、読みが深まったかどうかを確かめるためです。

 

先生が成績をつけるときの良い根拠となります。

 

また、子どもは感想を比べて自分の成長を感じられるようになります。

 

 

疑問⑤物語の「場面」をどう教えると伝わりやすいか?
 

以下の3つの物差しで考えさせるとよいです。

 

①時(いつ)

②場所(どこで)

③人物(だれが)

 

重要なのは、この3つのポイントに絞って場面分けさせることです。

 

なぜなら、このポイントのいずれかは必ず物語に書かれているためです。

 

逆に、これ以外の観点で場面分けをすると、子どもがあらゆる所から根拠を持ち出し、場面分けをするため、クラス全体が混乱してしまいます。

 

補足ですが、場面分けは難しいため、1年生の場合は先生が教えてあげてもよいです。

 

子どもに任せると、混乱して場面分けに対して消極的になってしまう可能性があるためです。

 

疑問⑥「場面分け」はいつさせると効果的なの?


効果的なタイミングというのは無いのですが、6年間のうち、一度はやらせるべきです。

 

基本的に1年生を除く、他の学年であれば場面分けさせることは効果的です。

 

ですが、どの学年においても、教材は低学年の短い物語文にすることをオススメします。

 

理由は、高学年の文章は長くて場面も多いため時間と労力がかかるためです。

 

物語文で最も大切なのは、場面分けではなく、あくまで作者の主題歌や、作品の心を読み取り、感想をもつことですから。

 

疑問⑦あらすじはまとめた方が良いのか?
 

あらすじまとめは、ポイントをおさえて授業の初め頃と、終わり頃に行うとよいです。

 

【指導のポイント】

・各場面「時、場、人物(したこと、思ったこと)」に関わる重要な言葉を逃さず書かせる。

 

→なぜかというと、物語の中で、キーワードになっているものを考えさせることができるからです。

 

・各場面ごとにあらすじは1文でまとめさせる。

 

→なぜなら、1文にすることによって、場面の大切な言葉が何かを考えることができるからです。1文にしないと、教科書をだらだらと写してしまう子が出てしまいます。

 

【あらすじまとめの効果】


1回目

授業の初めごろにまとめさせる。→まとめることで読みを深める。

 

2回目

単元の終わりでまとめさせる→どれだけ読みを深められたか変化を見ることができる。

 

※教育過程のこともありますので、毎回やる必要はないです。

 

疑問⑧物語の場面構成をどう教えると良いのか?

 

定番は「起承転結」ですが、二瓶先生は以下のように場面分けするとよいと言っています。

 

【物語文の場面構成】


前ばなし(物語の設定が書かれている。)

⬇︎

展開場面(物語が進んでいく部分)

⬇︎

クライマックス場面(物語の山場。一段落のみ

⬇︎

後ばなし(クライマックス場面後の変化が書かれている。)

 

とくに重要なのが、クライマックス場面は必ず1段落であることです。

 

1段落に絞ることで、主人公が大きく変わるきっかけになった出来事が、いったい何だったのか考えやすいからです。

 

もし、クライマックス場面を複数の段落でまとめると、子どもがきっかけとなる出来事を見つけられなかったり、時間がたくさんかかったりします。

 

 

疑問⑨主発問はどのようなものにすれば良いのか?

 

【二瓶先生が定義した主発問】

 

・主発問は、何が、どうして、どのように変わったかを考えること

 

・主発問は、単元全体で1つ。主発問をする授業以外の時間は準備期間。
 

・クライマックス場面をよく読み込み、そこから作ることが一般的。

 

・主発問だけでは授業は成立しません。それを補助する重要発問がいくつか必要です。この2種類の発問があって、子どもから深い読みが生まれる。

 

つまり、クライマックス場面を通して、主人公がどうして変化したのかを考えさせられる発問ということになります。。

 

ここからは番外編です。ここまで面白いなと思った方はぜひ、お読みください。

 

番外編①詩は文学か説明文のどっちに近い?

 

結論は、物語文に近いものになったり、説明文に近いものになったりするということです。

 

【詩の分類方法】

 

①詩人が作った詩の場合→文学(物語文に近い)

 

例:金子みすずさんの作品で、登場する「わたし」は金子さん自身ではないため、物語文に近いものになります。

 

②授業で子どもが、ある生活場面を詩にした→生活詩(説明文に近い)

 

例:冬はこたつで食べるミカンが美味くて、ほっぺが落ちそう。という詩を子どもが作った場合、ミカンを食べるのは子どもです。そのため、物語文というよりは説明文に近いです。

 

番外編②伝記は説明文か、物語文か?

【伝記の定義】

二瓶先生曰く「文学的表現を駆使した説明的文章」だそうです。つまり、心情描写が盛り込まれた説明文となります。

 

なぜ説明文になるかと言うと、伝記は筆者が偉人から学んだことを伝える文章だからです。

 

偉人から学ぶということは、偉人がこれまでやってきた事実から何かを学ぶということになります。 

 

筆者が、学んだことを伝えるために、どのエピソードを用いて、どのような表現をしたのか注目させるとよいです。

 

 

番外編③物語に出てくる動物は人物?

結論は「なるときはなる。ならないときはならない。」です。

 

【人物になるかどうかの区別方法】

○なるとき→人間のように話したり、考えたりしている場合。(ごんぎつねのごん)

✖️ならないとき→人間のように話したり、考えたりしない。(大蔵爺さんとガンの残雪、海の命のクエ)

 

残雪やクエは、あくまでも人物ではないが、登場するとても大切な動物となります。

 

 

番外編④ごんぎつねはなんで名作なのか?

ごんぎつねが名作である理由は、視点を、うまく使っているからです。

 

【視点とは?】

国語における視点というのは、いわば物語を誰が「語っているか」ということです。

 

語り手は誰だろうと意識をすると、物語の読みや良さが深まります。

 

視点は、主に2種類存在します。

 

【二つの視点】

①1人称視点→「私」視点(物語の主人公目線)

 

②三人称視点→語り手という第三者が物語を語っていきます。また、三人称視点は以下の3つの視点に分けられます。

 

【三種類の三人称視点】

1.限定視点→語り手が特定の人物の行動や心情を追う

例:スイミー、ごんぎつね、だいぞうじいさんとガン、やまなし、海の命など

 

2.客観視点→あくまで客観的に語り、心情を直接伝えることはない。

例:おおきなかぶ

 

3.全知視点→全ての登場人物の行動や心情を追う。

(全てを実況しているため、子どもっぽい。)

例:世界で一番やかましい音

 

 

では、ごんぎつねは視点を、どのようにして巧みに使っているのでしょうか?

 

それは最後の場面を見ると分かります。

 

基本的にこの物語は、きつねのごんの行動や心情を追う、限定視点で進みます。

 

なんですが、最後の場面で急にきつねのごんから、兵十に視点が切り替わるのです。

 

そうすることで2つの感情を読み手に感じさせます。

 

①今まで兵十のために頑張ってきたごんが、兵十に撃たれてしまって悲しい。

 

②ごんに寄り添った語りから、兵十目線の語りになることで、ごんの心の声が聞けなくなる。

 

つまり、「今、ごんはどんな気持ちなんだよ!!」「お願いだからごん!答えて!」みたいな気持ちになります。だから、より悲しく感じるんです。

 

まとめ

物語文の指導について、合計13の疑問とその解決方法を紹介してきました。

 

皆さんは、知っているものばかりだったでしょうか?

 

それとも知らないものばかりだったでしょうか?

 

個人的には、1つでも勉強になったと思ってくれたら嬉しいです。

 

ありがとうございました。